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『クレイドゥ・ザ・スカイ Cradle the Sky』森博嗣

クレィドゥ・ザ・スカイクレィドゥ・ザ・スカイ
(2007/06)
森 博嗣

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注意:ネタバレかもしれません。未読の方は後日、作品を読んでから不思議を共有しましょう。

<スカイ・クロラ>シリーズ本編の、刊行順では最後、物語の時系列では4冊目となるらしい作品。
語り手が記憶喪失であり、読んでいると「人の記憶や自己同一性とは何か」、より正確には「記憶と自己同一性の関係とは何か」について考えさせられる。
読む前にブログ等でみかけた評判では、語り手が意図的に隠されていて分からないということだったが、実際に読んでみると(多少の疑問は残るものの)本筋の語り手は草薙水素だろうと分かった。そもそもこのシリーズは、語り手が誰であっても「主人公」は草薙水素ただ一人のようなもの。そこから逆算すれば、たとえ名前が分からなくても、本筋で最もフィーチャされている人物=草薙水素、なのである。で、はっきりした根拠はないがプロローグは栗田、エピローグは函南が語り手だろう。
ただし、この物語に仕込まれている不思議(またはトラップ?)は語り手だけではない。私の中で最も引っかかっている疑問は、「栗田仁郎は2度死んだのか?」である。どう考えても、栗田が最低2回死なないと、ストーリィの時間の流れが1本にならない。以下に、かいつまんで整理する。
1. まず『クレイドゥ』では杣中が<栗田の死について草薙から聞いた>と話している。ちなみにこの時点では杣中は<草薙は半年前に戦死した>と考えているので、栗田の死は『クレイドゥ』本筋より半年以上前の出来事と推測できる。
2. 『クロラ』では笹倉が函南に対して<栗田の死は函南の配属の1週間前だった>と言っている。
3. その一方で、『クレイドゥ』の本筋から半年後と思われるエピローグで、函南は草薙と面識がない(つまり草薙の基地へ配属される前)。
上記の3点は、1番と2番を受け入れると3番と矛盾し、2番と3番を受け入れると1番と矛盾し、1番と3番を受け入れると2番と矛盾する。まるで出来の悪い嘘の3すくみ状態で、非常にすっきりしない。
どこか、この作品についてのブログエントリを集めている記事でもないか、本気で探してみようかと思うくらい、他にもいろいろな謎が頭から離れなくて困っている。
作品世界の雰囲気、登場人物の性格などの点で、このシリーズは『詩人・森博嗣』の形而上への憧れや抽象的思考について多くを語っているものだったが、最後の最後になって『ミステリィ作家・森博嗣』から絶妙な謎解きを仕掛けられた形だ。

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